アメリカらしいアメリカを取り戻す、トランプ大統領の意思は強い

 1月20日ドナルド・トランプ大統領就任の一連の式典が行われました。史上最高齢で政府・軍での経験のない初めての大統領です。強力なSNS発信力で大量のフォロワーを獲得し、メディアを翻弄させることができる破天荒な大統領です。

 大統領就任式典には、ジミー・カーター、ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマ各元大統領が出席しましたが、トランプ大統領の演説はその大半を、これまでの首都ワシントンのエスタブリッシュメント(支配階級)の政治の非難に使いました。

 言葉は続きます。「何十年もの間、我々は米国の産業を犠牲にし、外国の産業を富ませてきた。他国の軍隊を助成する一方で、米国の軍隊のとても悲しい消耗を許してきた。我々は他国の国境を守りながら、自国の国境を守ることを拒んできた。そして何兆ドルも海外に費やす一方で、米国のインフラが荒廃し、衰退した。我々は他の国々を豊かにしたが、自国の富、力、自信は地平線の彼方へ消えて行った。1つずつ工場が閉鎖され、海外へ移転され、何百万人もの米国の労働者が顧みられることさえなく、置き去りにされた。我々の中間層の富が家庭から奪われ、世界中に再配分された。」

 このことは、米国、英国とEUの主要国、日本に共通なことです。「米国は過去20年ほど、政治システムにおいていかなる進歩も成し遂げることができなかった」というハーバード大学の著名な教授もいます。通常は後進国が発展するために先進国はある程度譲歩するのですが、過去20年間はそれが過剰に、意図的に行われ、中間層が没落し、富がエリートに集中して、所得と資産の格差が拡大する結果になったわけです。トランプ大統領の就任演説は真実を伝えていると思います。

 私は何度も米国に行きましたし、ニューヨークは好きで街中を歩き回りました。しかし、本物のアメリカは米国中西部(Midwest)と米国南部です。ここはアメリカの農業、工業、エネルギー産業の中心です。世界中に製品を売っている優秀な技術を持った中小企業を尋ねて、カンザスシティの空港からセスナ機で南へ飛行した時、1本のあぜ道の上を10分以上飛びました。これがアメリカだ、と思いました。また、中西部には炭鉱が多く、南部へ行くとそこには石油があり、エネルギー産業の中心です。最近中西部の中の東北地方がラストベルト(Rust Belt)”さびついた工業地帯”と言われるようになり、炭鉱や工場の閉鎖で失業が増え、所得が減って、これまでの民主党支持からトランプ支持へと変ったのです。その結果、中西部と南部の殆どの州がトランプ支持になったのが、トランプ氏勝利の一番の理由です。最もアメリカらしいアメリカがトランプ大統領を選んだのです。

 私は中西部と南部は仕事で何回も行きました。オクラホマにあるメジャーの本社では社長とも一緒のテーブルで食事をしました。彼等は日本人と同じ位おもてなしの心を持つ人達です。つまり、ニューヨーク・フィラデルフィア・ワシントン・ボストンなどに代表される北東部は世界の政治・金融・学術の中心であるのに対して、中西部・南部はアメリカらしいアメリカで米国の生産を担っている地域です。まるで別の国と見ることもできます。アメリカらしいアメリカがエスタブリッシュメント(支配階級)のワシントンの政治に何十年もの間犠牲になり、職と富を失った人も多いのですから、反旗を翻すのは当然です。しかもヒスパニックの人口の伸びを考えると、彼等が選挙に勝てるのは今回が最後と考えてトランプ氏を勝たせたのです。

 当然、トランプ大統領はアメリカらしいアメリカを取り戻すために頑張るでしょう。アメリカの繁栄の源泉はニューヨークの金融街ではなく、中西部、南部、それに太平洋に面した州の産業でなければなりません。トランプ大統領が自分を支持した人達のことを忘れず改革を進めて行けば、再選はあり得ると思います。今の支持率40%45%は、女性や人種差別発言の影響があった割には根強い支持です。中西部と南部の熱烈な支持者は離れてはいません。米国民のために良い政治をすれば、支持率を10%上げることは訳ないでしょうから、本人が言っているように8年もあり得るでしょう。なぜならトランプ大統領の金融やエネルギーに関する規制緩和、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直し、減税や財政出動の政策とそれらに期待するNY株の値上がりで米国の経済は良くなるでしょうから。

 日本に対する影響は2つのことが考えられます。1つ目は過去何十年も世界に政治・経済を含め総合的にこれだけのショックと刺激を与えた変化は無かったと思います。日本人も色々な対策なり創造的なことを考えるでしょう。ソフトバンクの孫社長は早くもイノベーションが湧いているようです。2つ目は、トランプ大統領が永久離脱を宣言したTPPに代えて2国間の自由貿易協定(FTA)交渉を両国政府はすぐにでも始めるでしょう。これには日本政府も地方自治体も企業も動くでしょうから、構造改革を含め、経済成長には良い影響を与えると思います。TPP交渉に参加した国々との今後の関係も大切にしなければなりません。

 NHKが主要な企業100社を対象にアンケートを行ったところ、トランプ新政権の経済政策の自社への影響について、半数を超える56社が「どちらともいえない」と答えました(520日の発表)。これはちょっと情けない結果だと思います。トランプ大統領の政策の概要も、支持者がどういう人達かも就任前から分かっているのですから、もっと積極的な判断があってもよいのではないでしょうか。いずれにしろ、トランプ大統領の変革の政治は刺激になります。日本にも良い風が吹いてくるよう、「日米同盟の絆を強める」という安倍首相に期待しましょう。

 

(2017年1月27日 田村寛人)

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