イノベーションをもっと身近に感じよう

 高市早苗先生の早苗コラム「家庭で実感できるイノベーションの成果20090525日は忙しい永田町からの発信ながら、やさしい文章でイノベーションの正しい理解について述べられています。社長ブログ「イノベーション2016年127日には、日本の「失われた20年」の原因の1つは、1958年の「経済白書」がイノベーションを「技術革新」と訳したことにあると思っています、と書きましたが、今なお日本の新聞や学者が間違った理解をしています。

 高市先生があげるイノベーション事例としては、「技術イノベーション」の電子レンジ、お掃除ロボット、デジタルカメラ、カーナビ、カプセル内視鏡、インターネット、缶チューハイ氷結の三角トラスの缶、車のエアバッグ、「サービス・イノベーション」のインターネットで引越しの見積りができるサービス、ぐるなび、アマゾンの関連商品の販売促進やロングテール商品の販売、など家庭内の身近なところで体験できるイノベーションの実例を述べてられます。なぜこれらがイノベーションと言えるのかについても個々に詳しく説明されてます。高市先生は第1次安倍内閣で大臣在任中に「イノベーション25(2025年までを視野に入れた成長に貢献するイノベーションの創造のための長期的戦略指針)の策定を手掛けられたので、イノベーションとは何かを正確にご存知です。

 私がイノベーションの実例として更にあげたいのは、LCC(格安航空会社)、ハブ空港とハブ港湾、コンテナー船、ななつ星in九州、スマートフォン、3Dプリンター、デジタルサイネージ、オムニチャネル、駅探乗換案内、リースと割符販売、日本の開国以降の社会的イノベーション(ドラッカー著「イノベーションと企業家精神」)、聖徳太子と仏教の伝播、等などです。世の中を変えたのは「技術イノベーション」もありますが、「社会的イノベーション」も大きな進歩と貢献をもたらしたことが分かります。

 ウィキペディアによれば、『ヨーゼフ・シュンペーターは初期の著書「経済発展の理論」ではイノベーションではなく「新結合」という言葉を使っている。これは、クレイトン・クリステンセンによる「一見、関係なさそうな事柄を結びつける思考」というイノベーションの定義と符合する。なお、日本語では「技術革新」と訳されることが多いが、イノベーションは技術の分野に留まらない。』とあります。正にその通りです。

 ドラッカーによれば『既存の資源から得られる富の創出能力を増大させるのも、すべてイノベーションである』ことになります。企業にとってイノベーションは付加価値労働生産性を高め、収益を増やすためには絶対必要なものです。ドラッカーは『実際には、成功したイノベーションのほとんどが平凡である。単に変化を利用したものにすぎない。したがってイノベーションの体系とは、具体的、処方的な体系である』と述べています。つまりイノベーションの創出が企業にとって不可欠であると大上段に構えるとうまくいきません。中小企業の場合、カイゼンを通じてイノベーションを皆がもっと身近に感じるのも1つの処方であると思っています。職人が「これが一番良い方法だ」と思っているところへ、新しい材料や機械や考え方、世の中の変化等が現れてそれらが「新結合」するところにイノベーションが生まれるのです。

 首相官邸ホームページ「アベノミクス 成長戦略で明るい日本に!」(最終更新日:平成28316)を読むとがっかりします。その中で経済界に対して2015年を上回る賃上げの検討を呼びかけています。しかし円安の輸出で儲けたといった不安定な利益は賃上げの原資にはなりません。付加価値労働生産性の向上と安定した売上増加による収益向上が賃上げの原資になり得るのです。付加価値労働生産性を押し上げるのは新技術、IT化などの研究開発や設備投資によるものもありますが、大企業・中小企業を問わず影響力の大きいのは身近にあるイノベーションでしょう。首相官邸ホームページの「イノベーションの促進」の項には、大学の改革のような10年~20年かかることしか書いてありません。イノベーションの意味を知らない人が作文していて、論理に矛盾があると思います。

 

(2016年4月5日 田村寛人)

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