トランプ大統領に期待する現実重視の政治と経済活性化

 米国大統領選挙のテレビで、トランプ氏の支持者たちのあまりにも真剣な、思いつめた顔つきを見て、クリントン氏の応援団との差を感じ、勢いはトランプ氏が勝ると感じていました。この人たちが本来は安定的に民主主義の中道政治を支える白人中間層ですが、長年にわたる米国社会の所得格差と資産格差の広がり、実質所得の低下、安い輸入品や工場の海外移転による失業、移民の増加や環境問題からの炭鉱閉山などで職を失う危機にさらされ、不満が爆発しました。更に米国の人種別人口はヒスパニックの増加で、虐げられた白人中間層が団結しても選挙に勝てるのは今回が最後で、これを逃がすと4年後は無理ではないかと考え、反乱を起こしたのです。

 今までの共和党・民主党の主流派の政治家達は国民の置かれた現実に目をつぶってきたということです。今回の米大統領選挙は、今までの主流派による政治が否定され、大衆の声が草の根運動のように広がり、自分たちの代表としてトランプ氏を選んだことは、民主主義の勝利と言えるでしょう。この点では、1113日のTBSサンデー・ジャポンで杉村太蔵氏が語った論調は正しいと思います。

 トランプ氏の勝利をポピュリズム(大衆迎合主義populism)だという評論家が多いのも事実です。ポピュリズムの定義からすると、トランプ氏の高揚した演説、Twitterによる情報発信などが目立った選挙運動はぴったり合います。しかし、トランプ氏は選挙運動中過激な発言はありましたが具体的な政治行動を述べていたこと、トランプ氏を応援したのが民主主義を支える中心勢力の中間層であったことを考えると、ポピュリズムとの非難は当たらないと思います。

 英国のEU離脱の国民投票の場合は、移民問題やEUの負担金にばかり関心が行き、その後の政治・経済体制のことはあまり頭になかったのではないでしょうか。EU離脱を誘導した政治家にも問題があり、ポピュリズムの典型と言われても仕方ないと思います。

 トランプ氏が白人中間層に対して公約したことは、大半を実行に移すと思います。メキシコからの不法移民の中で犯罪歴のある者の送還や国境の取り締まりの強化、規模はともかく壁も作るでしょう。

 資本主義の世界では強い国がある程度譲って貿易の自由化や政治・経済・環境問題のグローバル化を進めるというのが常道ですが、トランプ次期大統領はAmerica Firstのスローガンを声高々に叫んでいます。大統領就任初日にTPP離脱を宣言するとか、北米自由貿易協定(NAFTA)は災害だと批判して見直しの必要性を述べる、或いは中国製品に対して高関税をかける、など米国国内産業を守り、そこで働く人達の雇用を守る姿勢は変えていません。異例とも言える大統領就任前の交渉で、民間会社であるキャリア社とインディアナポリスにある工場のメキシコ移転(メキシコの工場は完工寸前)の中止で合意し、約1100人以上の雇用を維持することで成果をアピールしました。このことが米国で許されるのであれば、日本政府も得意の行政指導を早くやるべきです。今を逃すとチャンスは巡ってきません。日本の中小企業は大企業の生産拠点の海外移転で困っていますから、トランプ氏と同じ政策を早く取るべきでしょう。

 しかし、TPP参加国には米国の同盟国を初め、米国にとってかけがえのない東アジア・東南アジアの国々が含まれています。中国とこれらの国々との自由貿易協定(FTA)に対抗する意味でも、また東アジア・東南アジアでの安全保障問題からも、トランプ大統領は何時かTPPに復帰すると思います。122日トランプ氏が台湾の蔡英文総統と電話協議したことを米国としては初めて公表したこと、また11日のテレビ番組で「一つの中国」の原則を揺るがす発言をしたことは、この地域の安全保障を重視することの表れでしょう。国務長官にエクソンモービルCEOティラーソン氏を選んだことは、外交についてもトランプ流の現実主義の表れと見られ、蔡英文総統との電話協議や「一つの中国」問題を中国との今後の取引に使えると考えたタフネゴシエーターの本性でしょう。米国経済の安定した成長と失業率の低下を見定めて、TPPに対する政策転換はあり得ると思っています。

 トランプ氏の金融規制緩和、法人税率引き下げ、インフラ整備等の発言によって、ドル高・株高が続いています。しかし、連邦準備制度理事会(FRB)は12141年ぶりの利上げを決め、2017年中に3回の利上げ予定を公表しましたから、世界のドルが米国に吸い上げられて一時的には米国はじめ世界経済は停滞するでしょう。しかし、トランプ大統領には強い援軍がいます。それはOPEC合意による原油生産の削減です。原油価格が上昇すれば、オイルマネーも動き出し、今の世界経済のデフレ化の暗雲はかなり解消します。シェールオイル増産の影響はありますが、中国経済の改善によって石炭など資源価格が上昇に転じたことで、国際的なインフレムードが漂ってきました。日本では株高による景気回復と円安によって、日銀黒田総裁の悲願である物価上昇率2%が達成されるかも知れません。

 トランプ氏は言いたいことを云って相手の反応を待つやり方ですから、国民には先のことが分かり易く、個人消費や設備投資は増加するでしょうし、これに財政出動が加われば間違いなく米国景気は良くなり、日本も恩恵を受けそうです。

 トランプ大統領は2017年の世界にとって期待の星です。4年後の再選は十分あり得るでしょう。白人中間層の票だけでは足りませんが、トランプ大統領の政策によって、同じような恩恵を受ける米国の市民権を得たヒスパニックの票が大きく増えると思われるからです。

 安倍首相は現実主義の政策を進めてきたことが高い支持率を得ている一番の理由だと思います。トランプ氏もアベノミクスに興味がありますから、安倍首相が世界の首脳で最初に会えたことは幸運でした。ウマが合う二人によって両国の関係がうまく回っていくことを期待しましょう。

 ご愛読有難うございました。今年の社長ブログはこれで終わります。トランプ大統領が就任する2017120日以降にまたお目にかかりましょう。

 

皆様のご健勝とご多幸をお祈り致します。どうぞ良いお年をお迎えください。

 

(2016年12月17日 田村寛人)

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