レガシーとエコシステムは共存できるか

 東京テレビ系列で木曜日の21時から放映される「和風総本家」を良く見ます。ちょっとニヒルな感じの司会進行役増田和也が良いのと、豆助がかわいいからですが、度々ある企画の中で「世界で見つけたMade in Japan」「○○を支える職人たち」には日本人でなければできない職人技と職人魂を見せつけられていつも感激しています。

 ところが、職人への取材でいつも語られるのは「後継者がいない」「私が日本で最後になるでしょう」との言葉です。芸者さんの髪飾りなどもそのうち作る人がいなくかも知れず、味気ない世の中になりそうです。見た目に素晴らしいものであっても、世界中にない性能の道具であっても、現在の世の中に僅かな需要しか無いもの、需要が減少していくもの、生活するだけの収入にならないものは、レガシー(先人が作り上げたシステム・古いシステム、遺産)に属します。「和風総本家」がいくら放映しても需要が増えるわけはなく、後継者が現れるわけでもありませんから、視聴者は「日本にはこういう優秀な職人が大勢いた時代があったなあー」とレガシーとして見ています。ドイツのマイスター制度を真似ても、市場が盛り返せない限り、優秀な職人の後継者は出ないでしょう。マイスター制度も岐路に立っているようです。

 模型の世界では約20年前までは一人の職人が殆どの時間を自分の机で図面を見、材料を加工し、組み立てて模型を作っていました。今は、机は半分以上あいています。机に座っているのはデータ処理のためPCと向かい合っている人が殆どです。この情景から言えることは20年前と今は制作システムが変っているということです。20年前までを「レガシー」(legacy)、今を「エコシステム」(business ecosystem)と呼びます。

 ウィキペディアを引くと、エコシステム(バズワード)と出てきます。バズワード(buzzword)は「定義や意味があいまいなキーワード」のことです。従って辞書によって書いてある意味が異なります。ウィキペディアによると「経済的な依存関係や協調関係、または強者を頂点とする新たな成長分野でのピラミッド型の産業構造といった、新規な産業体系を構成しつつある発展途上の分野での企業間の連携関係全体を表すのに用いられる用語である」。Appleが典型です。大会社、中堅企業、中小企業でもエコシステムは可能です。日本は遅れています。シャープと鴻海(ホンハイ)の問題では垂直統合型か水平分業型かが論議されましたが、世界はもっと先を行っています。

 弊社は約10年前から「下請け」という言葉を使っていません。外注加工先も仕入先も「協力企業」と呼んでいます。「協力企業」にお願いするのは仕様通りの物作りや物品の納入だけでなく、ソリューションの提案を期待するからです。大中小を問わず、協力する企業がお互いに共通の問題に対するソリューションを出し合えば、日本の企業や日本経済はもっと強くなるでしょう。これが「エコシステム」の良いところだと思います。

 私は「エコシステム」に必要なことは、優秀な職人の技術と品質を維持すること(レガシー)、イノベーションによって技術と品質と生産性を常に向上させること、監理監督能力、良好なコミュニケーションなどが考えられます。レガシーなくしてエコシステムは成り立たないと思います。長年勤務した優秀な職人が去り、企業のシステムが急速に変化する中で、レガシーをどうやって維持し、それを生かしていくかが日本の企業の重要な課題だと思います。

 

 

(2016年5月26日 田村寛人)

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