中小企業のサスティナブル経営とは、CSVで企業と社会の共通価値を創造することは楽しい

 マイケル・E・ポーター博士が2011年に発表した論文「共通価値の戦略」で提唱したCSV(Creating Shared Value共通価値の創造)という概念が、中小企業にとっても重要な経営理念になってきました。CSR(Corporate Social Responsibility企業の社会的責任)については、私は学校の授業で聞きましたからずい分古くからある言葉ですが、法令遵守や安全管理から始まって公害がひどくなるにつれて環境対策がクローズアップされてきた記憶があります。弊社もこれまでCSRに取り組んできましたが、企業が社会に対して責任を果たすという一方向的な、リスク対策のような考えから出発していることも気になります。

 日本には近江商人が行商の心得として260年前から守ってきた「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)という言葉があります。同じく近江商人の「商売の心得十訓」の最初に「商売は世の為、人の為の奉仕にして、利益はその当然の報酬なり」が出てきます。また、松下幸之助氏の言葉で現在もパナソニックの経営理念になっている「事業を通じて社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与すること」「企業は社会の公器である」があります。いずれもポーター博士が言っているCSVと同じことですから、日本の学者は誰もそれを学問として体系付けをしなかったので、横取りされたのです。

 改めて、「三方よし」を遺言書に書いた麻布商、中村治兵衛氏と経営の神様、松下幸之助氏に敬意を表さねばなりません。日本で白熱電球や電気洗濯機を初めて実用化した東芝、実態上消滅した三洋電機、外資の傘下に入ったシャープと比較して、パナソニックが困難を乗り越えて頑張っているのは松下幸之助氏の経営理念のおかげだと思います。

 どちらかと言えば企業にとって一方向的に社会問題の解決に責任を果たすというCSRから、積極的に企業が「事業を通して経済的価値を創造しながら社会的ニーズに対応することで社会的価値も創造する」CSVへと移行するのは当然だと思います。

 日本の中小企業受難の時代に、弊社はサスティナブル経営(Sustainable持続可能な)を目指していますが、そのためにCSVに取り組もうとすると、文献には難しいことが多く書かれています。そこで、弊社の事業で日頃努力していることの社会的な関わりを深めることの模索から始めることにしました。

 初歩的にCSVを実行すべく、次の3点に重点を置いています。

(1)人材の確保:米国ではトランプ大統領が「アメリカ人を雇え」と叫んでいます。優秀な人材の確保は弊社の願いでもあり、雇用を増やすことは政治の要件でもあります。

(2)模型製作という事業を通して常に世間を考え、社会との関わりを深め、企業と社会の共通価値を創造していく:例えば、弊社はリーマンショック前に比べ電力消費を40%削減しましたが、環境負担を減らすと同時に弊社の出費も減りました。模型材料の合成樹脂や木材の端材の発生を抑える努力は地球上の資源の消費を減らしています。太陽光発電・風力発電・小水力発電・大規模蓄電池の模型製作は自然エネルギーの利用を啓蒙するのに役立ちます。マンションの模型はマンションの販売を促進しGDPを増加します。研究開発用の模型は日本の技術開発力を高めます。展示用や販促用の模型は顧客獲得に役立つと同時に大勢の人に新しい知識を与えます。

(3)企業からの発信を増やす:インターネットテレビのeo光チャンネル「技術立国日本」で西日本模型について約30分間の動画を放映しています。GoogleYahooの検索で eo光チャンネル技術立国日本 を開いていただき、その中の「過去に放送した番組」「西日本模型」の「動画を見る」バナーをクリックしますと、西日本模型という企業がよくご理解いただけます。模型製作会社の中は見たことが無い人が殆どですから、この企業からの発信は多くの人達に思いがけない刺激を与え、モノ作りのこだわりを持った社員のことも知ってもらえるでしょう。こうした情報発信は弊社のブランディング(Branding)にも貢献することです。

 これまでCSRとして取り組んできた法令遵守、公害対策、安全管理等は、結果的に企業価値や競争力向上に役立つわけですから、CSRCSVに含めて考えて良いと思います。

 CSVで企業と社会の共通価値を創造する、との意識を持って仕事や事業をやっていくことは、楽しいことです。CSVの一番の成果は仕事を通じて社会に貢献できるという楽しみだと思います。日本で始まってポーター博士が体系づけたCSVを、大企業は勿論のこと、中小企業も皆が実行していけば、日本の将来は社会と企業が共生したすばらしい国になると思います。

(2月に5回にわたって社員に朝礼でCSVについて話した内容をまとめたものです。)

 

(2017年2月13日 田村寛人)

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