英国EU離脱に見える統合の難しさと非エリート中間層の反乱

 6月23()に行われた英国の国民投票でEU離脱が過半数を占め、英国がEUに離脱を通知してから2年をかけて英国とEUが離脱に向けた協議をすることになりました。EUは離脱ドミノを避けるために強い態度で交渉に出ると言われています。世界の金融センターとしてのシティの地位は低下し、ポンドは下落するでしょう。英国経済はもちろん、世界経済にとっても重大な影響が出ると思われます。リーマンショックの再来を懸念する声が聞かれます。政治的にもEUの弱体化や更なる離脱に向けた動き、世界の安全保障体制の緩み、それに乗じたロシアや中国の動きに注意が必要です。EUのように政治的には各国が独立し、経済面で関税を無くす、住民の移動も自由、といった統合の難しさは内外の情勢が比較的うまく行っている時は良いのですが、昨今のように大勢の移民や難民問題が起きると、職や収入を失う危険を感じる非エリート層や中間層の反乱が起きます。キャメロン首相が2013年に国民投票を公約し、法律まで作った見通しの甘さと過ちは指導者として失格でしょう。こういった問題については代議制民主主義の統治形態を重んじるべきで、キャメロン首相が国民投票に走ったことはポピュリズム(大衆迎合主義)が裏目に出たと見られても仕方ありません。国民投票後のインターネットでは「EU」の検索が増えたと言います。離脱に投票した人が後悔しているとの声も流れてきます。どれだけの国民がEUについて、また、EU離脱について十分な知識を持っていたか疑問です。

 同じことは米国の共和党大統領候補になることが確実なトランプ氏についても言えます。米国では一部の人たちに富が集中し、中間層、特に白人中間層の割合が減る一方なのです。移民の増加は白人中間層の不満を増大させるだけでなく、人口に占める白人の割合の低下を招き、今年の大統領選挙が白人中間層が反乱を起こせる最後のチャンスかも知れないのです。頭の良いトランプ氏はそこを読んで票集めをしているのです。非常に危険なことです。合法的なヒスパニックの移民が自分たちの職を守るために不法移民を締め出すトランプ氏に投票することも要注意です。ヒラリー・クリントン氏がTPP再交渉を言い出したのも、多国間の経済連携による関税引き下げが英国と同じく白人中間層(非エリート)の不安と反感を買うのを防ぐ狙いです。驚くほど、英国の国民投票と米国の大統領選挙は似ているのです。意見を報道に出す人たちは殆どがエリートに属しますから、国民の実態とは違うでしょう。

 実は私も英国の国民投票の結果は読み違えてました。米国では最近トランプ氏の支持率が急落したとの報道がありますが、英国の例で分かる通り、非エリート層や中間層の反乱は予期せぬ票が集まります。フロリダ州オーランドの痛ましい銃乱射事件も逆にトランプ氏に有利に働くかも知れません。これからの米国大統領選挙の動きから目が離せません。

 救われることは英国の国民投票の出口調査で若者のEU離脱反対が圧倒的に多かったことです。それに対してEU離脱が過半を占める老人層は大英帝国の想い出が強いのでしょう。英国が将来再びEUに加盟する日が来ると思います。日本でもこの様な国の将来を決める国民投票が行われた場合、少子高齢化の下では年齢別の不公平が生じます。高齢者は若者の声に耳を傾けることが必要です。

 英国のEU離脱により、日本経済も大きな打撃を受けます。安倍内閣は今秋打ち出す経済対策の規模を10兆円以上にすることを検討するそうですが、英国のEU離脱により何が起きるか想像がつかないほどの出来事ですので当然だと思います。当分は日本国内の需要喚起で食いつないで行くしかなさそうです。

 

 

(2016年6月29日 田村寛人)

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