2017年10月22日の総選挙は重要な争点がいっぱいあって政党選びが難しい

突然起こった野党再編・消費増税反対か使途変更か・人づくり革命か基礎的財政収支の黒字化か・日銀の異次元緩和の出口への道筋は・北朝鮮の脅威への対処は制裁強化でよいか・憲法9条に自衛隊加憲が必要か・原発存続の可否など、今回の総選挙は重要な争点がいっぱいあります。

 安倍首相は2017928日召集の臨時国会冒頭に衆議院を解散しました。総選挙は1010日公示、1022日投票になります。重要な争点がいっぱいあって、夫々が専門家でも意見が分かれている状態で国民は政党の選択を迫られるわけです。しかも急転直下小池東京都知事が代表を勤める新党「希望の党」を立ち上げたのが解散の3日前の925日で、前原代表の野党第1党・民進党は解散の日に希望の党への合流を正式に決めました。これを仲立ちしたのが連合の神津会長だと云いますから政界・労働界を巻き込んだ野党再編は思わぬ時に起きました。しかも小池氏は日本維新の会代表の松井大阪府知事や愛知県の大村知事と大都市・地方連合と地方分権を模索しています。一方民進党で希望の党の公認を得られない枝野氏などのリベラル系は「立憲民主党」を103日旗揚げしました。わずか9日間の野党再編劇でした。民進党の前原代表は「全てが想定内だ。政権交代可能な状況をつくらないといけない。自分の判断は正しかった」と述べています。マスコミは「自民・公明」「希望・維新」「立憲民主・共産・社民」の3極が固まったと騒いでいます。

 問題は残ります。小池氏が東京都知事を辞めないと言っていますし、希望の党は首班指名選挙で誰に投票するのでしょうか。小池氏は925日のテレビ出演で「山口那津男さんがいいと思います」と語っています。これは小池氏の或る考えが口に出たのだと思います。衆議院の首班指名選挙の1次投票で希望の党が山口氏に入れたとしますと決選投票は安倍氏と山口氏の争いになります。野党が協力すれば、小池氏の思惑が実現する可能性も無いとは言えません。「安倍政権をストップさせる」という前原氏・小池氏の目的からすれば、これくらいの策略は考えているでしょう。5日小池氏は1994年に当時野党だった自民党が政策の異なる社会党の村山委員長を首相に担いで与党に返り咲いたことに触れています。

 希望の党は「改革保守」を掲げていますから、米国の共和党と民主党の関係のように日本も二大政党時代に入るのでしょうか。それとも欧州のように少数政党が乱立する方向に行くのでしょうか。連合は希望の党が民進党のリベラル派を排除したので連合の掲げる政策と考え方が一致すれば希望の党に限らず民進党出身の候補者を支援する方針です。これですと労働界では旧総評系が立憲民主党につながる可能性があります。

 小泉元首相が200588日に行った郵政解散と比較すると、はるかに高度な政治的知識を要求される選挙ということができます。郵政解散のときは政権党がポピュリズムに訴えたのですが、今回は野党再編の余勢を駆って野党側がポピュリズム旋風を巻き起こしているのです。欧米で起きていることと同じですから、選挙の結果はうかつには予想できません。

 安倍首相は201910月に予定する消費増税の使い道を広げ、幼児教育の無償化など人づくり革命にも使うために、基礎的財政収支の黒字化を先送りすることになることを総選挙で国民の信を問うと訴えました。小池氏は消費税増税の凍結を公言しています。教育無償化・社会保障・財政収支の黒字化は野党にとっても逃げられない政策目標です。財源をどう考えているのでしょうか。トランプ大統領の減税政策とよく似ているように思います。日本維新の会の言う身を切る改革によって何兆円捻出できるのでしょうか。恐らく小池氏も同じことを考えるでしょうが、数字で示す具体的な話は未だありません。

 小池氏は「しがらみのない政治」「日本をリセットする」と盛んに言っています。安倍首相が森友学園と加計学園問題では脇が甘いところを見せて国民から非難を浴びました。反省の釈明をしても支持率は下がりました。この問題は安倍首相に対する国民の冷静な総合評価と小池氏の新鮮に聞こえるキャッチコピーのどちらが勝つかです。私には結果が読めません。

 私が最も心配しているのが異次元緩和の出口です。日銀は毎月のマネタリーベースを発表しています。20178月末残高は469兆円です。2010年頃は100兆円、異次元緩和が始まった2013年は130兆円でした。米連邦準備理事会(FRB)は様々なシミュレーションをして保有資産の縮小に舵を切りましたが、黒田日銀総裁はインフレ目標を達成するまで緩和政策を続けると言っています。ハイパーインフレーションにならない出口戦略を各党は真剣に検討しているのでしょうか。今回の選挙戦ではどの党もこれについては口を閉ざしているのが心配です。

 北朝鮮の挑発行為に対して国連安全保障理事会は911に北朝鮮制裁強化決議案を全会一致で採択しました。北朝鮮は多くの抜け道を持っているらしく、効果は薄いようです。戦争と核爆弾の使用は絶対に避けなければなりません。石油の全面禁輸は日本の真珠湾攻撃の引き金になったことを考えてもやるべきではありません。この問題の解決は中国が北朝鮮の核開発やミサイルを自国に対する危険と見なすかどうかにかかっていると思います。米国と中国の協調、米国独自の制裁強化策も有効でしょう。日本はハリネズミ防衛論(古い言葉ですが)と安全保障関連法に基づく集団的自衛権で守るという方向性が決まっています。希望の党も公認の条件として提出を求めている「政策協定書」には安全保障関連法について「適切に運用し、現実的な安全保障政策を支持する」と書いています。これで「自民・公明」「希望・維新」の2極は日本の安全保障の基本政策がほぼ一致することになり、二大政党制の芽が固まってきたといえます。

 憲法問題の中心は9条の3項として自衛隊を加憲するかどうかです。重要な国際法である国連憲章では個別的又は集団的自衛の固有の権利は認めているので憲法に規定する必要はない、という説もあります。

 しかし、自衛隊の目的を憲法に規定しないで国際法のみに頼ると、個別的又は集団的自衛の固有の権利がどんどん拡大する危険性もあります。もっとも北朝鮮の挑発を見ると自衛のための防衛施設は相当に高度な技術とお金がかかることが予想されます。公明党の公約で実績の積み重ねが大事としながらも加憲には慎重な態度を取っていることは理解できます。

 原発存続の可否も難しい問題です。福島の悲劇は二度と起こしてはなりません。私の学生時代卒論のテーマはもんじゅの設計に関連した基礎研究でした。それだけに高速増殖炉や核燃料リサイクルを含めて非常に関心があります。自民公約は原発再稼動ですが、自民党にも色々な考えの人がいます。小泉元首相が「私が生きてるうちに原発ゼロを成し遂げたい」と言ってそれを小池氏が希望の党の公約に「2030年までの原発ゼロ」として取り入れたのですが、小池氏は自民党総務会長時代、東日本大震災の4ヵ月後に自民党機関誌に「超原発」、つまり原発を超えて太陽光・風力発電などの自然エネルギーをもっと使わないともったいない、という発言をしていますから矛盾はないのすが、2030年までのゼロというのは票目当ての感もあります。原子力の技術力を日本に残す形で、危険のない原子力政策を政党を超えて考えて欲しいものです。

 以上のように、1022日の投票はいっぱいある争点について自分の考えを定め、重要と思う結論と公約が一致する政党を選ばなければなりません。欧米の最近の選挙のように、結果を見てしまった、と思うことが無いようにしましょう。日本の将来にとって大事な選挙です。

 

(2017年10月7日 田村寛人)

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